ただ、出費を抑えてもおいしさや楽しさなどの幸福感や満足度も得たい人は多いです。ヒットするのもそうした需要をうまくとらえた商品なのです。
ビール風味ながら麦芽の量を減らし価格を抑えてヒットした発泡酒や第三のビールはその好例です。「淡麗」や「のどごし〈生〉」を持つキリンビールは7月8日、「キリンコーラショック」を発売しました。清涼飲料市場では炭酸飲料、特にコーラ飲料の伸びが顕著です。同社はコーラを飲む大人はアルコールも一緒に飲む確率が高いとのデータを読み解き、コーラとウオッカを組み合わせた新製品を開発しました。

狙いは小さい時からコーラを飲み慣れた20〜40代男女です。しかしコーラを最初に体験したのは、「アラ還」とも呼ばれる団塊世代です。戦後日本の消費文化をけん引してきた力はあなどれません。
実はコーラショックの「裏ターゲット」は団塊世代なのです。
ローソンが「美と健康」をテーマに展開する「ナチュラルローソン」は自分のために出費を惜しまない30代女性、「アラサー」世代が「表ターゲット」です。管理栄養士が有機野菜や産地直送の食材を厳選し、弁当類は600`i以下で、一般のコンビニエンスストア商品より約1割高いのです。消費者の低価格志向で苦戦気味ですが、野菜たっぷりのパスタなど量を減らし価格を抑える工夫もしています。

当初はオフィス街に勤める20〜30代女性や30〜40代の主婦の利用が多かったのですが、「メタボ」への関心が高まったころから30〜50代男性が急増しています。
対象顧客は常に動きます。
裏ターゲットを想定し、それが表ターゲットになっていく流れを読む力が必要です。
(2009年7月17日 日経産業新聞より)
裏ターゲットはこの他にもまだあります。
靴下のずり落ち≠防ぐための「ソフタッチ」、本来はサラリーマンをターゲットに開発されましたが、女性のキャミソールを留めたり、女子高生のルーズソックスを留めるのに使われる例が多くなったそうです。
シャンプーでは、「男性用のシャンプー」を女性が使うケースが増えているそうです。頭皮の汚れがしっかり落とせる∞メンソール系の成分で爽快感が得られる≠ニいう機能に女性がメリットを見出しているようです。
視覚障害者向けに開発された「黒いまな板」は、大根や豆腐などの白い食材を切るときに便利なので、口コミで広がりました。
「炊飯器」もご飯を炊く以外の使われ方がされています。
モノが売れない時代の解決法の一つが、「表ターゲット」を読む力ですね。